2008年11月10日月曜日

米国 法律事務所の費用構造

下の記載は断片的情報から私が推測したものであって、米国法律事務所の裏をとったものではありません。したがって、間違っている可能性は多分にありますのでそのつもりで読んでください。また、この内容について、より正しい、詳細な情報をお持ちの方がおられましたらぜひその情報をご提供ください

米国法律事務所の構成がどうなっているのか興味ありませんか?
最近読んだ本によると、
・パートナー :経営者層
・アソシエイト :雇用者
・パラリーガル:雇用者
・ITスタッフ、サーチャー、文書管理スタッフ:雇用者
です。これは誰でも知っていると思います。次に事務所の収益と支出の関係ですが、
事務所収益=収入-支出(税金、雇用者への給与、その他経費など)
となります。これも常識的な範囲ですね。
事務所の収入は訴訟などの成功報酬、サービスの売上などの合計となります。例えば、特許実務においては、USPTOなどへの手続き代行サービス料+アトニーのタイムチャージ料金などがサービス売上に相当します。
アソシエイトの給与は年棒制で、原則的に何時間働こうが年棒は変わりません。格別の売上があった場合はBONUSとして支給されます。ただし、カスタマーへ請求するBillable-hourはノルマで決められています。下の図を見ていただけばわかると思いますがだいたい1900時間が目安のようです。
アソシエイトとして収入を増やすにはBillable-hourを稼いで、BONUSを期待するか、それともより少ない時間でBillable-hourを確保(例えば、実動1500時間で1900時間に相当するサービスを提供する。この場合、年収は増えませんが計算上の時給は増えます)し、副業またはキャリアアップのための準備をするという方法が考えられます。

パートナーは経営者ですので、かれらの給与は事業所収益から支払われます。つまり、事務所の収入が増えれば増えただけ給与が多くなります。パートナーとしてはアソシエイトがBillable-hourを増やすことを期待します。

つまり、
アソシエイトはどんなに長く働こうが(BONUSは別として)給与は一緒、時給で計算すると損をする
パートナーはアソシエイトが長時間働いて(もちろんBillable-hourを増やしながら)くれれば給与が増える
というようになっていて、アソシエイトとパートナーは反対の立場にあります。ですから、パートナーはアソシエイトに「パートナーへの昇格」という餌をちらつかせて猛烈に働かせようとすることになります。

ちなみに、アソシエイトの稼ぐ金額の約1/3がアソシエイトの給料の目安だそうです。例えば、下の図を参照すると、Latham&Watkinsの場合、入所1年目のアソシエイトの給料は16万ドル、Billable-hourは1900時間となっています。これらの数値から1年目アソシエイトが顧客に要求する時間あたりのFeeを計算してみましょう。

事務所の収入=16万×3=48万ドル
Fee/Hour=48万ドル÷1900時間=253ドル

となります。PatentlyOの記事(Reasonable Billing Rates)も参照ください。
この金額は皆さんの感覚とだいたあいますでしょうか?

米国の特許事務所と価格交渉する場合、
 事務所サービス料金の削減=特許事務所が案件にかける時間削減
となる可能性が大きいと思います。

日本の会社内で知財関係予算削減が取り上げられた時、まっさきに俎上に上がるのは外国特許料金削減だと思います。会社の管理層は、日本国内の調達先と同じ感覚で特許事務所へ支出する経費削減を要求することが多いと思いますので、上記事情を勘案し、総合的に知財費用を節約するという観点で計画を立てる必要があると思います。

 

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